今日のトーラーポーションは、2025年11月23日 創世記25章27節から34節 第一サムエル25章26章 マタイ23章23節から39節 この中から、マタイの福音書で主イエスが言われたバラキヤの子ザカリアについてです。
目次
はじめに:混乱していた私
マタイ23章35節を読んだとき、正直に言うと混乱しました。
「それは、義人アベルの血からこのかた、神殿と祭壇との間で殺されたバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上で流されるすべての正しい血の報復がおまえたちの上に来るためです」
「バラキヤの子ザカリヤ」って誰?
預言者ゼカリヤ書のゼカリヤ?でも彼は殺されていない…。イゼベルが殺した預言者たち?でもそれは複数だし、バラキヤの子じゃない…。
頭の中で色々な聖書の場面が混ざり合って、整理がつかなくなっていました。
聖書は膨大です。読んでも前のことを忘れてしまいます。同じように混乱している方がいるかもしれないので、今日は聖書に記録された預言者と義人の殉教を時系列で整理してみたいと思います。
なぜイエス様は「アベルからゼカリヤまで」と言われたのか?
ヘブル語聖書の配列が鍵
まず、これを理解するために知っておくべきことがあります。
私たちが使っている聖書の順序と、イエス様の時代に使われていたヘブル語聖書の順序は少し違うのです。
日本語聖書(七十人訳ギリシャ語訳の順序): 創世記 → … → 列王記 → 歴代誌 → … → マラキ書(最後)
ヘブル語聖書の順序: 創世記 → … → 列王記 → … → 歴代誌(最後!)
つまりヘブル語聖書では:
- 最初の書: 創世記 → 最初の殉教者アベル(創世記4章)
- 最後の書: 歴代誌 → 最後の殉教者ゼカリヤ(歴代誌下24章)
イエス様は「旧約聖書の最初から最後まで」という意味で、**「アベルからゼカリヤまで」**と言われたのです!
英語で言えば「From A to Z」のような表現なんですね。
聖書に記録された預言者と義人の殉教【時系列リスト】
それでは、聖書に記録されている殉教者たちを時系列で見ていきましょう。
【旧約聖書時代】
1. アベル – 人類最初の殉教者(創世記4:1-16)
時代: 人類の初期、紀元前年代不明
王: なし(王制以前)
職分: 羊飼い、義人
殺した者: 兄カイン
あらすじ
アダムとエバの次男アベルは羊飼いでした。長男カインは農夫でした。
二人が神様にささげ物をしたとき:
- カイン: 地の作物をささげた
- アベル: 羊の初子の中から、それも最上のものをささげた
神様はアベルとそのささげ物に目を留められましたが、カインとそのささげ物には目を留められませんでした。
カインは激しく怒り、弟アベルを野に誘い出して殺しました。
神様がカインに「あなたの弟アベルは、どこにいるのか」と問われると、カインは「知りません。私は、自分の弟の番人なのでしょうか」と答えました。
神様は言われました:
「あなたは何ということをしたのか。聞け。あなたの弟の血が、その土地からわたしに叫んでいる」(創世記4:10)
カインは放浪者となり、神の前から追放されました。
殉教の理由:
- 正しいささげ物をしたから
- 神に受け入れられたから
- 兄の妬みと怒り
意義: 人類最初の殉教者。義のゆえに殺された最初の人。ヘブル11:4は「信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたいけにえを神にささげ、そのいけにえによって彼が義人であることが証明されました」と記しています。
2. ウリヤ預言者(エレミヤ26:20-23)
時代: 紀元前609-598年頃
王: ユダ王国エホヤキム王
職分: 預言者
殺した者: エホヤキム王
あらすじ
ウリヤはキルヤテ・エアリムのシェマヤの子で、預言者でした。
彼はエレミヤと同じようなことばで、この都と、この国について預言しました。つまり、ユダの罪を指摘し、神の裁きが来ると警告したのです。
エホヤキム王と、そのすべての勇士、すべてのつかさたちが、彼のことばを聞いたとき、王は彼を殺そうとしました。
ウリヤはこれを聞いて恐れ、エジプトに逃げました。
しかしエホヤキム王は、人々をエジプトに遣わしました。彼らはウリヤをエジプトから連れ出し、エホヤキム王のもとに連れて来ました。
王は彼を剣で打ち殺し、その死体を平民の墓地に投げ捨てました。
殉教の理由:
- 神の裁きを預言したから
- 王の罪を指摘したから
- エレミヤと同じメッセージを語ったから
意義: エレミヤと同時代に働いた預言者。真実を語って逃げても、追跡されて殺された例。エレミヤが殺されなかったのは、神の特別な保護があったから。
3. イゼベルによる主の預言者たちの大量虐殺(Ⅰ列王記18:4, 13; 19:1-2, 10, 14)
時代: 紀元前874-853年頃
王: 北イスラエル王国アハブ王
職分: 主の預言者たち(複数)
殺した者: 王妃イゼベル
あらすじ
アハブは北イスラエルの王でしたが、シドンの王エテバアルの娘イゼベルを妻に迎えました。
イゼベルはバアルとアシェラの熱心な礼拝者で、イスラエルに偶像礼拝を持ち込みました。アハブは彼女の影響で、サマリヤにバアルの神殿を建て、アシェラ像を造りました。
イゼベルは主の預言者たちを組織的に殺害し始めました。
宮廷長官オバデヤは主を恐れる人でしたが、イゼベルが主の預言者たちを殺したとき、彼は百人の預言者を救い出しました:
- 五十人ずつ二つのほら穴に隠した
- パンと水で彼らを養った
つまり、少なくとも100人以上の預言者が殺された可能性が高いのです。
カルメル山でエリヤがバアルの預言者450人とアシェラの預言者400人を殺すと、イゼベルはエリヤに使者を送りました:
「もしも私が、あすの今ごろまでに、あなたのいのちを彼らのひとりのいのちのようにしなかったなら、神々が幾重にも私を罰せられるように」(Ⅰ列王記19:2)
あの力強いエリヤでさえ、恐れてベエル・シェバの荒野に逃げました。
エリヤは神に訴えました:
「イスラエル人はあなたの契約を捨て、あなたの祭壇をこわし、あなたの預言者たちを剣で殺しました。ただ私だけが残されました」(Ⅰ列王記19:10, 14)
殉教の理由:
- バアル礼拝を邪魔したから
- 主への信仰を守ったから
- イゼベルの偶像礼拝政策に反対したから
意義: 旧約聖書で最大規模の預言者虐殺。組織的・計画的な宗教迫害。しかし神は残りの者(7000人、Ⅰ列王記19:18)を守られた。
イゼベルへの神の裁き: Ⅱ列王記9:30-37で、新しい王エフーによって窓から投げ落とされ、馬に踏みつけられ、犬に食われた。エリヤの預言(Ⅰ列王記21:23)が文字通り成就。
4. バラキヤの子ゼカリヤ(歴代誌下24:17-22)
時代: 紀元前835-796年頃
王: 南ユダ王国ヨアシュ王
職分: 祭司、預言者
殺した者: ヨアシュ王と民衆
あらすじ
背景: ヨアシュは7歳で王になり、大祭司エホヤダに育てられました。エホヤダが生きている間、ヨアシュは良い王でした。神殿を修復し、主を礼拝しました。
しかしエホヤダが130歳で死ぬと、状況が一変しました。
エホヤダの死後: ユダの高官たちが王のもとに来て、彼にひれ伏しました。王は彼らの言うことを聞き入れました。
人々は:
- 父祖の神、主の宮を捨てた
- アシェラ像や偶像に仕えた
神の怒りがユダとエルサレムの上に下りました。
神の警告: 主は彼らを主に立ち返らせようと、預言者たちを遣わしました。預言者たちは彼らを戒めましたが、彼らは耳を貸しませんでした。
ゼカリヤの預言: そのとき、神の霊が祭司エホヤダの子ゼカリヤに臨みました。
彼は民の前に立って言いました:
「神はこう仰せられる。なぜ、あなたがたは主の命令を犯すのか。あなたがたは栄えることができない。あなたがたが主を捨てたので、主もあなたがたを捨てられた」(歴代誌下24:20)
殺害: ところが、人々は彼に対してたくらみました。そして王の命令で、主の宮の庭で、彼を石で打ち殺しました。
これがどれほど恐ろしいことか:
- 育ててくれた恩人エホヤダの息子を殺した
- 神殿の庭という最も聖なる場所で殺した
- 王自身が命令した
ゼカリヤの最後の言葉:
「主がこれをご覧になって、あなたに報復されますように」(歴代誌下24:22)
彼は自分で復讐せず、主に委ねました。
神の報復: その年の終わりに、アラムの軍勢が攻めて来ました。小さな軍勢でしたが、ユダの大軍を打ち破りました。
ヨアシュは重傷を負いました。彼の家来たちが、祭司エホヤダの子たちの血のために、彼に対してたくらみ、彼を床の上で打ち殺しました。
殉教の理由:
- 真実を語ったから
- 民の罪と神の裁きを預言したから
- 王と民の偶像礼拝を戒めたから
意義:
- ヘブル語聖書(歴代誌が最後)における最後の殉教者
- イエス様が「アベルからゼカリヤまで」と言われた理由
- 恩知らずの罪の象徴
- 神殿の中で殺された(マタイ23:35「神殿と祭壇との間で」)
注意: マタイは「バラキヤの子」と記していますが、歴代誌では「エホヤダの子」。これについては学者の間で議論があります。
【新約聖書時代】
5. 洗礼者ヨハネ(マタイ14:1-12; マルコ6:14-29; ルカ9:7-9)
時代: 紀元後28-29年頃
王: ガリラヤ領主ヘロデ・アンティパス
職分: 預言者、バプテスマのヨハネ
殺した者: ヘロデ・アンティパス
あらすじ
背景: ヨハネは荒野で悔い改めのバプテスマを宣べ伝えていました。多くの人々が彼のもとに来て、罪を告白し、バプテスマを受けました。
ヨハネの勇気ある説教: ヘロデ・アンティパスは、兄弟ピリポの妻ヘロデヤを奪って自分の妻にしました。
ヨハネはヘロデに言いました:
「あなたが兄弟の妻を自分のものとしているのは不法です」(マルコ6:18)
投獄: ヘロデヤはヨハネを憎み、殺したいと思っていました。しかしヘロデはヨハネを義人で聖なる人だと知っており、恐れていました。
ヘロデはヨハネを牢に入れましたが、殺すことはできませんでした。民衆がヨハネを預言者と認めていたからです。
ヘロデの誕生日の宴会: ヘロデが誕生日の祝宴を開いたとき、ヘロデヤの娘が踊りました。
ヘロデは大喜びし、娘に誓って言いました:
「おまえの願うものは何でも与える。私の国の半分でも」
娘は母ヘロデヤのところに行って相談しました。ヘロデヤは言いました:
「バプテスマのヨハネの首を求めなさい」
娘は急いで王のところに行き、願いました:
「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、いただきとうございます」
処刑: 王は非常に心を痛めましたが、誓ったことと、列席の人たちの手前、断りきれませんでした。
王はすぐに衛兵を遣わし、ヨハネの首を持って来るように命じました。衛兵は行って、牢の中でヨハネの首をはね、盆に載せて持って来て、少女に渡し、少女はそれを母に渡しました。
殉教の理由:
- 王の罪(不倫)を指摘したから
- 真実を語る勇気を持っていたから
- ヘロデヤの憎しみ
- ヘロデの弱さと誓いのゆえ
意義:
- イエス様の先駆者
- 最後の旧約的預言者であり、最初の新約の殉教者
- 権力者の罪を恐れずに指摘した
- イエス様は彼を「女から生まれた者の中で、ヨハネよりすぐれた人は出ませんでした」と評価(マタイ11:11)
6. イエス・キリスト(マタイ27章; マルコ15章; ルカ23章; ヨハネ19章)
時代: 紀元後30年頃
権力者: ローマ総督ピラト、大祭司カヤパ、ユダヤ最高議会
職分: 神の子、メシア、預言者、王、祭司
殺した者: ローマとユダヤ指導者たち
あらすじ
背景: イエス様は約3年間、ガリラヤとユダヤで教え、奇跡を行い、神の国を宣べ伝えられました。しかし、ユダヤの宗教指導者たち(祭司長、律法学者、パリサイ人)は次第にイエス様を憎むようになりました。
理由:
- 安息日に癒しを行った
- 罪人や取税人と食事をした
- 偽善を鋭く批判した(マタイ23章)
- 神殿を清めた
- 自分を神の子と宣言した
- 民衆の人気を集めた(自分たちの権威への脅威)
逮捕から十字架まで: 過越の祭りの前夜、イエス様はゲツセマネの園で祈っておられました。弟子の一人ユダ・イスカリオテが裏切り、祭司長たちに引き渡しました。
数回の裁判の後(アンナス、カヤパ、サンヘドリン、ピラト、ヘロデ・アンティパス)、ついにピラトは群衆の圧力に負けて、イエス様を十字架刑に処すことを許可しました。
民はみな答えました:
「その人の血は、私たちや子どもたちの上にかかってもいい」(マタイ27:25)
十字架刑:
- 鞭打たれた
- いばらの冠をかぶらせられた
- ゴルゴタまで十字架を背負って歩いた
- 午前9時頃、十字架につけられた
- 「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」(ルカ23:34)
- 正午から午後3時まで、全地が暗くなった
- 「完了した」(ヨハネ19:30)
- 息を引き取られた
しるし: 神殿の幕が真っ二つに裂けた。地が揺れ動き、岩が裂けた。
埋葬と復活: アリマタヤのヨセフが遺体を引き取り、新しい墓に納めました。3日目に復活されました。
殉教の理由:
- 真理を証しされたから
- 罪を指摘されたから
- 神の子であることを宣言されたから
- 宗教指導者たちの偽善を暴露されたから
- 神の計画: 人類の罪のための贖いの子羊として
意義:
- すべての預言者殉教の頂点
- 「アベルからゼカリヤまで」の系列の完成
- 単なる殉教ではなく、人類の罪のための身代わりの死
- 3日目の復活によって、死に勝利された
- 新しい契約の仲保者
- 教会(キリストの体)の礎
7. ステパノ(使徒7章)
時代: 紀元後34-35年頃
権力者: ユダヤ最高議会(サンヘドリン)
職分: 執事(ディアコノス)、最初の殉教者
殺した者: ユダヤ人の群衆(サウロも同意)
あらすじ
背景: ステパノは信仰と聖霊に満ちた人で、使徒たちによって7人の執事の一人に選ばれました。彼は民の間で大きな不思議としるしを行いました。
論争と偽りの告発: リベルテンの会堂の人々が立ち上がり、ステパノと論じ合いましたが、彼の知恵と御霊には対抗できませんでした。
そこで彼らは人々をそそのかして偽りの証言をさせ、ステパノを最高議会に引き出しました。
ステパノの説教: ステパノは旧約聖書の歴史を語り、こう結論しました:
「かたくなで、心と耳とに割礼を受けていない人たち。あなたがたは、いつも聖霊に逆らっているのです。あなたがたの父祖たちと同じです。あなたがたの父祖たちが迫害しなかった預言者がだれかあったでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを前もって宣べた人たちを殺したが、今はあなたがたが、この正しい方を裏切る者、殺す者となりました」(使徒7:51-52)
殺害: 人々ははらわたを煮え返らせ、ステパノに向かって歯ぎしりしました。
しかしステパノは聖霊に満たされ、天を見つめて言いました:
「見なさい。天が開けて、人の子が神の右に立っておられるのが見えます」(使徒7:56)
人々は大声で叫びながら、耳をおおい、いっせいにステパノに殺到しました。そして彼を町の外に追い出して、石で打ち殺しました。
証人たちは、自分たちの着物をサウロという青年の足もとに置きました。
ステパノの最後の言葉:
「主イエスよ。私の霊をお受けください」
「主よ。この罪を彼らに負わせないでください」(使徒7:59-60)
そして眠りについた。
殉教の理由:
- イエス様の復活を証ししたから
- ユダヤ指導者たちの罪を指摘したから
- 「イエスこそメシア」と宣言したから
意義:
- 初代教会最初の殉教者
- イエス様の殉教の型に従った
- この迫害がきっかけで、弟子たちがエルサレムから散らされ、福音が広がった
- サウロ(後のパウロ)の回心の一因となった可能性
8. ヤコブ(ゼベダイの子、ヨハネの兄弟)(使徒12:1-2)
時代: 紀元後44年頃
王: ヘロデ・アグリッパ1世
職分: 使徒、イエスの12弟子の一人
殺した者: ヘロデ・アグリッパ1世
あらすじ
背景: ヤコブはゼベダイの子で、ヨハネの兄弟、イエス様の12使徒の一人でした。ペテロ、ヤコブ、ヨハネは特にイエス様に近い3人でした。
殺害: そのころ、ヘロデ王(ヘロデ・アグリッパ1世)は、教会の者たちを苦しめようとして、その手を伸ばしました。
「彼はヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺しました」(使徒12:2)
それがユダヤ人の気に入ったのを見て、次にはペテロをも捕らえました。
ヘロデの最期: その後、ヘロデは自分を神とした罪のため、主の使いに打たれ、虫にかまれて死にました(使徒12:23)。
殉教の理由:
- イエス・キリストの使徒だったから
- 教会を苦しめようとする王の迫害
- ユダヤ人の気に入るため
意義:
- 12使徒の中で最初の殉教者
- 聖書に記録された使徒の殉教はヤコブのみ
- 簡潔な記述: 「剣で殺した」の一言
- イエス様が予告されていた: 「あなたがたは、わたしの飲む杯を飲みます」(マルコ10:39)
なぜ預言者は殺されるのか?【5つの理由】
聖書全体を見ると、預言者が殺されるパターンが見えてきます。
1. 真実を語るから
権力者の罪を指摘する預言者は、都合が悪いのです。
2. 悔い改めを迫るから
「このままでは神の裁きが来る」というメッセージは、聞きたくありません。
3. 偶像礼拝を邪魔するから
イゼベルにとって、主の預言者たちはバアル礼拝の障害物でした。
4. 良心を刺激するから
ゼカリヤは「あなたがたが主を捨てた」と言いました。これは痛い真実です。
5. 神の権威を代表するから
預言者を殺すことは、神ご自身を拒絶することなのです。
混乱の原因:イゼベル事件との違い
私がゼカリヤとイゼベルを混同していたのは、どちらも預言者を殺した事件だからです。
でも詳しく見ると、全く違う事件でした。
主な違い
| 項目 | ゼカリヤ事件 | イゼベル事件 |
|---|---|---|
| 時代 | BC 835-796年頃 | BC 874-853年頃 |
| 場所 | 南ユダ王国エルサレム | 北イスラエル王国各地 |
| 王 | ヨアシュ王 | アハブ王/王妃イゼベル |
| 被害者 | ゼカリヤ(一人) | 100人以上の預言者 |
| 殺害方法 | 石打ち(神殿の庭で) | 剣または石打ち(各地で) |
| 性質 | 一時的な怒り | 組織的・計画的虐殺 |
| 保護者 | なし | オバデヤが100人を隠した |
| 神の裁き | ヨアシュは暗殺された | イゼベルは犬に食われた |
共通点
- 偶像礼拝の横行
- 真実を語る預言者
- 権力者による殺害
- 神の確実な報復
⚖️ ゼカリヤ事件とイゼベル事件の比較
よく混同される二つの預言者殺害事件を整理する
📅 時期: BC 835-796年頃
👑 王: ヨアシュ王
⚔️ 被害者: ゼカリヤ(一人)
📖 聖書箇所: 歴代誌下24:17-22
📅 時期: BC 874-853年頃
👑 王: アハブ王 / 実行者: 王妃イゼベル
⚔️ 被害者: 主の預言者たち(100人以上)
📖 聖書箇所: Ⅰ列王記18:4, 13; 19:1-2, 10, 14
| 比較項目 | ゼカリヤ事件 | イゼベル事件 |
|---|---|---|
| 時代と場所 | 南ユダ王国 エルサレム神殿 BC 835-796年頃 |
北イスラエル王国 サマリヤなど各地 BC 874-853年頃 |
| 支配者 | ヨアシュ王 ・7歳で即位 ・祭司エホヤダに育てられた ・エホヤダの死後、背教 |
アハブ王と王妃イゼベル ・アハブは弱い王 ・イゼベルがバアル礼拝を推進 ・シドンの王の娘 |
| 背景 | ・エホヤダの死後、偶像礼拝が復活 ・アシェラ像と偶像に仕える ・預言者たちの警告を無視 |
・イゼベルがバアル神殿を建設 ・アシェラの預言者400人を養う ・主の預言者たちを敵視 |
| 被害者 | ゼカリヤ(一人) ・祭司エホヤダの息子 ・祭司であり預言者 ・神の霊に満たされた |
主の預言者たち(複数) ・100人以上と推定 ・オバデヤが100人を隠して保護 ・組織的虐殺 |
| 預言の内容 | 「なぜ主の命令を犯すのか。あなたがたが主を捨てたので、主もあなたがたを捨てられた」 (歴代誌下24:20) |
詳細不明だが、主への信仰を守り、バアル礼拝に反対したと推定される |
| 殺害の動機 | ・真実を語ったから ・王と民の罪を指摘 ・神の裁きを預言 |
・バアル礼拝を邪魔したから ・主への信仰を守ったから ・イゼベルの宗教政策に反対 |
| 殺害の方法 | 石打ちの刑 ・王の命令による ・主の宮の庭で ・公開処刑 |
剣か石打ち(詳細不明) ・組織的・計画的虐殺 ・各地で実行 ・密かに行われた可能性 |
| 殺害の場所 | 神殿の庭 最も聖なる場所での殺害という皮肉 |
各地 北イスラエル王国全域で |
| 最後の言葉 | 「主がこれをご覧になって、あなたに報復されますように」 → 復讐を主に委ねた |
記録なし 多くの預言者の最後の言葉は不明 |
| 保護者 | なし 誰も守ることができなかった |
オバデヤ(宮廷長官) 100人の預言者を隠して保護 パンと水で養った |
| 有名な預言者との関連 | 特になし (ゼカリヤ自身が殉教者) |
エリヤ カルメル山でバアルの預言者を殺害 イゼベルから逃亡 「私だけが残された」と嘆く |
| 神の報復 | ・翌年、アラムの軍勢に敗北 ・ヨアシュは重傷 ・家来たちに暗殺された ・「エホヤダの子たちの血のために」 |
・イゼベルは窓から投げ落とされた ・馬に踏みつけられた ・犬に食われた ・エリヤの預言が文字通り成就 |
| 特徴的な点 | ・育ててくれた恩人の息子を殺した ・神殿の中での殺害 ・ヘブル語聖書最後の殉教者 |
・旧約最大規模の預言者虐殺 ・組織的・計画的 ・女性(王妃)が主導 |
| 聖書での言及 | イエス様が引用 「バラキヤの子ザカリヤ」 マタイ23:35 「アベルからゼカリヤまで」 |
・Ⅰ列王記で詳述 ・エリヤの嘆きの文脈 ・黙示録2:20でも言及される (「イゼベル」は偽預言者の象徴) |
🔗 共通点
- 偶像礼拝の横行: どちらも背教の時代に起きた
- 真実を語る預言者: 神のメッセージを妥協なく伝えた
- 権力者による殺害: 王や王妃の命令で殺された
- 神の報復: 殺害者は必ず神に裁かれた
- 残りの者: 神は常に忠実な者を守られた
- 証しとしての死: 殉教は神への忠実さの証明
⚡ 重要な違い
- 規模: ゼカリヤは一人、イゼベルは100人以上の大量虐殺
- 実行者: ヨアシュ王(男性)が直接命令 vs イゼベル王妃(女性)が主導
- 場所: 神殿の庭(公開) vs 各地(組織的・秘密裏)
- 聖書での位置づけ: ゼカリヤはイエス様が「アベルからゼカリヤまで」と特別に引用
- 動機: ゼカリヤ事件は一時的な怒り、イゼベル事件は計画的宗教政策
イエス様の言葉の深い意味
マタイ23章でイエス様は、パリサイ人たちに向かって7つの「わざわいだ」を宣言されました。その最後の部分が、今日のテーマです。
「だから、わたしが預言者、知者、律法学者たちを遣わすと、おまえたちはそのうちのある者を殺し、十字架につけ、またある者を会堂でむち打ち、町から町へと迫害して行くのです。それは、義人アベルの血からこのかた、神殿と祭壇との間で殺されたバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上で流されるすべての正しい血の報復がおまえたちの上に来るためです」(マタイ23:34-35)
イエス様が伝えたかったこと
- 旧約聖書全体を貫く歴史: 最初から最後まで、神のメッセンジャーは拒絶され、殺され続けた
- すべての正しい血の報復: アベルからゼカリヤまでのすべての殉教者の血が、パリサイ人たちに問われる
- この系列の頂点にいるご自身: イエス様ご自身が、まさにこの預言者殉教の系列の頂点に立とうとしている
- 父祖と同じ罪: 「私たちなら預言者を殺さなかった」と言いながら、まさに今、最大の預言者を殺そうとしている
- 「罪の目盛りの不足分を満たす」: 父祖たちが始めた預言者殺しの歴史を、神の子を十字架につけることで「完成」させてしまう
📜 預言者殉教の時系列チャート
アベルからヤコブまで – 聖書に記録された殉教者たち
✦ 兄の妬みと怒り
✦ 王の罪を指摘、神の裁きを預言
✦ エジプトまで追跡され、剣で殺された
✦ 主への信仰を守ったため
✦ 組織的・計画的虐殺(100人以上?)
✦ 神殿の庭で石打ちの刑
✦ 最後の言葉:「主が報復されますように」
✦ ヘロデヤの憎しみ
✦ 宴会での誓いのため、首をはねられた
✦ 宗教指導者の偽善を暴露
✦ 十字架刑 – 人類の罪の身代わり
✦ 3日目に復活!
✦ 指導者たちの罪を指摘
✦ 石打ちの刑
✦ 最後の言葉:「この罪を彼らに負わせないで」
✦ 教会への迫害
✦ 剣で殺された
✦ 12使徒最初の殉教者
📖 「アベルからゼカリヤまで」
イエス様の引用が示す旧約聖書全体の血の叫び
ヘブル語聖書の配列が鍵!
出エジプト記
レビ記
民数記
申命記
ヨシュア記
士師記
ルツ記
サムエル記
列王記
歴代誌 ← ゼカリヤの殉教
エズラ記
ネヘミヤ記
…
マラキ書 ← 最後
出エジプト記
レビ記
民数記
申命記
ヨシュア記
士師記
サムエル記
列王記
イザヤ書
エレミヤ書
エゼキエル書
…
歴代誌 ← 最後!
└ ゼカリヤの殉教
「アベルからゼカリヤまで」と言われた!
旧約聖書全体を貫く殉教の歴史
ヘブル語聖書の「最初の書」から「最後の書」まで
👤 職分: 羊飼い、義人
⚔️ 殺害者: 兄カイン
📍 場所: 野(創世記4:8)
💭 理由: 正しいささげ物をして神に受け入れられたため。兄の妬みと怒り
📖 聖書箇所: 創世記4:1-16
🗣️ 神の言葉: 「あなたの弟の血が、その土地からわたしに叫んでいる」(創世記4:10)
✨ 意義: 人類最初の殉教者。義のゆえに殺された最初の人。ヘブル11:4「信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたいけにえを神にささげた」
👤 職分: 祭司、預言者(エホヤダの息子)
⚔️ 殺害者: ヨアシュ王と民衆
📍 場所: 主の宮の庭(歴代誌下24:21)
💭 理由: 民の罪と神の裁きを預言したため。「あなたがたが主を捨てたので、主もあなたがたを捨てられた」
📖 聖書箇所: 歴代誌下24:17-22
🗣️ 最後の言葉: 「主がこれをご覧になって、あなたに報復されますように」(歴代誌下24:22)
✨ 意義: ヘブル語聖書最後の殉教者。育ててくれた恩人の息子を、神殿の庭で殺すという忘恩の罪の象徴
🔍 なぜこの二人なのか?
ヘブル語聖書の配列では、創世記が最初、歴代誌が最後です。イエス様は「旧約聖書全体」を意味するために、この二人を選ばれました。英語で言えば「From A to Z」のような表現です。
2. 両者の共通点
• どちらも義のゆえに殺された
• どちらも神に受け入れられていた
• どちらも復讐を主に委ねた(アベルの血は叫び、ゼカリヤは「主が報復を」と言った)
• どちらも無実だった
3. 両者の対比
• アベル: 兄弟に殺された → ゼカリヤ: 自分の民に殺された
• アベル: 野で殺された → ゼカリヤ: 神殿で殺された
• アベル: 個人的な妬み → ゼカリヤ: 組織的な拒絶
✝️ イエス様が伝えたかったこと
- 旧約聖書全体を貫く歴史: 最初から最後まで、神のメッセンジャーは拒絶され、殺され続けた
- すべての正しい血の報復: アベルからゼカリヤまでのすべての殉教者の血が、パリサイ人たちに問われる
- この系列の頂点にいるご自身: イエス様ご自身が、まさにこの預言者殉教の系列の頂点に立とうとしている
- 父祖と同じ罪: 「私たちなら預言者を殺さなかった」と言いながら、まさに今、最大の預言者を殺そうとしている
- 「罪の目盛りの不足分を満たす」: 父祖たちが始めた預言者殺しの歴史を、神の子を十字架につけることで「完成」させてしまう
🌟 現代の私たちへのメッセージ
• アベルからゼカリヤまでの歴史は、神が何度も何度も語りかけ続けたことを示しています
• 預言者が殺されても、また預言者を送られました
• 最後に神の子ご自身を送られました
• 今、私たちは聖書を通して同じメッセージを聞いています
私たちの選択:
• 神の言葉を受け入れるか、拒絶するか
• 悔い改めるか、心を頑なにするか
• イエス様を救い主として受け入れるか、拒むか
希望のことば(マタイ23:39):
「『祝福あれ。主の御名によって来られる方に』とあなたがたが言うときまで、あなたがたは今後決してわたしを見ることはありません」
→ イスラエルの回復の希望。そして異邦人である私たちへの祝福!
イエス様の嘆き – 「めんどりのたとえ」
激しい叱責の言葉の後、イエス様は深い悲しみを表されます:
「ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者。わたしは、めんどりがひなを翼の下に集めるように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった」(マタイ23:37)
めんどりのイメージ
ヘブル語で「翼の下に集める」はカーナーフ(כָּנָף)を使った慣用句で、神の保護と親密さを表します。
ルツ記2:12でボアズがルツに言った言葉と同じイメージです:
「主の翼の下に逃れて来たあなた」
イエス様の本心
激しい「わざわいだ」の言葉の背後に、何度も何度も呼びかけ続けた愛があるのです。
拒絶されても、石を投げられても、最終的に十字架につけられても、それでも「翼の下に集めたい」と願い続けた愛。
これが福音の核心です。
希望のことば
最後にイエス様は希望を語られます:
「見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。あなたがたに告げます。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に』とあなたがたが言うときまで、あなたがたは今後決してわたしを見ることはありません」(マタイ23:38-39)
これは詩篇118:26の引用です。イスラエルが民族として「イエスこそメシアだ」と認める時が来る、という預言です。
ローマ11:25-26も同じことを語っています:
「兄弟たち。私はあなたがたに、ぜひこの奥義を知っていていただきたい…こうして、イスラエルはみな救われる、ということです」
預言者たちは殺されました。イエス様も十字架につけられました。でもそれが終わりではないのです。
神様の計画は必ず成就します。
現代の私たちへの適用
1. 真実を語る代償
今日でも、真実を語る者は迫害されることがあります。でも神の霊が臨む時、私たちは結果を恐れずに語らなければなりません。
2. 復讐は主のもの
ゼカリヤは「主が報復されますように」と言いました。自分で復讐しようとはしませんでした。
ローマ12:19:
「愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい」
3. 神は必ず見ておられる
不正は必ず裁かれます。時には時間がかかっても、神の正義は必ず実現します。
4. 殉教者の血は教会の種
使徒パウロも言っています(Ⅱテモテ3:12):
「キリスト・イエスにあって敬虔に生きようと願う者はみな、迫害を受けます」
でも同時に(Ⅱコリント4:8-9):
「私たちは四方八方から苦しめられますが、窮することはありません。途方にくれていますが、行きづまることはありません。迫害されていますが、見捨てられることはありません。倒されますが、滅びません」
まとめ
今日、私たちは聖書に記録された8人の殉教者を見てきました:
- アベル – 最初の殉教者
- ウリヤ預言者 – エレミヤと同じメッセージ
- 主の預言者たち – イゼベルによる大量虐殺
- ゼカリヤ – 最後の殉教者(旧約)
- 洗礼者ヨハネ – イエス様の先駆者
- イエス・キリスト – すべての殉教の頂点
- ステパノ – 初代教会最初の殉教者
- ヤコブ – 12使徒最初の殉教者
「アベルからゼカリヤまで」とは、旧約聖書全体を貫く預言者殉教の歴史を意味していました。
そしてその系列の頂点に、イエス・キリストが立っておられます。
私たちも、ゼカリヤのように、エリヤのように、そしてイエス様のように、真実を語り続け、愛し続け、希望を持ち続けるのです。
あとがき
今日の記事を書きながら、改めて気づかされました。
聖書は膨大で、前に読んだことを忘れてしまいます。でも、こうして整理してみると、神様の一貫したメッセージが見えてきます。
何度も何度も預言者を送り、呼びかけ続けた神様。拒絶されても、殺されても、また送り続けた神様。最後に神の子ご自身を送られた神様。
そして今、私たちは聖書を通して、同じメッセージを聞いています。
私たちはどう応答するでしょうか?
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聖書箇所索引:
- 創世記4:1-16(アベル)
- エレミヤ26:20-23(ウリヤ)
- Ⅰ列王記18:4, 13; 19:1-2, 10, 14(イゼベル)
- 歴代誌下24:17-22(ゼカリヤ)
- マタイ14:1-12; マルコ6:14-29(ヨハネ)
- マタイ23:34-39(イエス様の言葉)
- 使徒7章(ステパノ)
- 使徒12:1-2(ヤコブ)
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こちらのnote記事は聖書初心者版です。よろしかったらどうぞ。


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