2025年12月31日
目次
はじめに
I歴代誌1章は、アダムから始まる壮大な系図です。一見すると名前の羅列に見えますが、この中には神の救済計画の全体像、終末預言との接点、そしてヨブ記の時代設定につながる重要な情報が隠されています。
バビロン捕囚から帰還したユダヤ人にとって、この系図は「私たちは誰なのか」「どこから来たのか」「神の約束は今も有効なのか」という問いへの答えでした。
セツからアブラハムへ ― メシアの系図
アブラハムはセツの子孫です。歴代誌1章は、アダム → セツ → … → ノア → セム → … → アブラハムという系図をたどります。
なぜカインではなくセツなのか。創世記4:25-26にその答えがあります。「神は、カインが殺したアベルの代わりに、別の子を私に授けてくださった」とエバは言い、「セツにもまた男の子が生まれ…主の御名によって祈ることが始まった」とあります。
セツの系図は「神を呼び求める」敬虔な系統として続き、ノアを経て、セム、そしてアブラハムへと至ります。メシアであるイエス・キリストも、このセツの系統から生まれました。
この系図が私たちに告げているメッセージ:「あなたは宇宙の偶然の産物ではない。創造の初めから、神の計画の中にいる。」
ノアの三人の息子 ― 全人類の起源
ノアの三人の息子、セム・ハム・ヤペテから、洪水後の全人類が広がっていきました。創世記10章の「諸国民の表」がここに凝縮されています。
セム ― メシアの系統
セム(שֵׁם・シェーム)の子孫からメシアが生まれます。アルパクシャデ → シェラフ → エベル(「ヘブル人」の語源)→ ペレグ(「地が分けられた」)→ … → テラ → アブラハム。
ノアは「セムの神、主はほむべきかな」(創世記9:26)と祝福しました。この祝福の通り、救い主はセムの系統から来られました。
ハム ― エゼキエル戦争の同盟国
ハム(חָם・ハーム)の子孫には、終末のエゼキエル戦争に登場する国々が含まれています。
クシュ(エチオピア) ― エゼキエル38:5に登場
プテ(リビア) ― エゼキエル38:5に登場
ミツライム(エジプト) ― ペリシテ人の祖
カナン ― 約束の地の先住民
また、クシュの子ニムロデは「地上で最初の権力者となった」(1:10)と記されています。バベルの塔の建設者と考えられ、神に反逆する権力の象徴として描かれています。
ヤペテ ― エゼキエル戦争の主力
ヤペテ(יֶפֶת・イェフェト)の子孫には、エゼキエル戦争でイスラエルを攻める主要な国々が含まれています。
マゴグ ― エゼキエル38:2「ゴグの地」
メシェク ― エゼキエル38:2
トバル ― エゼキエル38:2
ゴメル ― エゼキエル38:6
トガルマ ― エゼキエル38:6「北の果て」
創世記10章の「諸国民の表」が、そのまま終末預言の地図となっていることは驚くべきことです。神は歴史の初めから終わりまでを見渡しておられます。
テマン人とヨブの時代
I歴代誌1:45に「テマン人の地から出たフシャム」という記述があります。このテマン人は、エサウの孫テマン(1:36)の子孫です。
「テマン人エリファズ、シュアハ人ビルダド、ナアマ人ツォファルは、ヨブに降りかかったこのすべてのわざわいを聞き、それぞれ自分の所から来て、彼を見舞い、慰めようと相談していた。」(ヨブ記2:11)
ヨブの友人エリファズは「テマン人」でした。テマンはエドムの都市で、知恵で有名でした(エレミヤ49:7「テマンにはもう知恵がないのか」)。
ヨブが族長時代の人物と考えられる根拠
1. モーセの律法への言及がない ― シナイ契約以前の時代を示唆
2. ヨブ自身が祭司として犠牲を捧げる ― 族長的慣習(ヨブ1:5)。レビ族の祭司制度以前
3. 寿命が長い ― 試練後140年生きた(ヨブ42:16)。族長時代の寿命に近い
4. 財産の単位 ― 羊・らくだ・牛で数える遊牧民的生活
5. テマン人との交流 ― エドム地域(エサウの子孫)との密接な関係
推定時代:アブラハム〜ヨセフの頃(紀元前2000-1800年頃) ― ヨブ記は聖書で最も古い書物の一つである可能性が高いです。
エサウの子孫とエドム
I歴代誌1章の後半(35-54節)は、エサウの子孫とエドムの王たちの記録です。
興味深いのは、1:43の記述です。「イスラエル人の王が治める以前、エドムの地で治めた王たちは次のとおりである」。エドムはイスラエルより先に王国を持っていたのです。
しかし神の選びはエサウではなくヤコブでした。「兄は弟に仕える」(創世記25:23)という預言は、歴史の中で成就していきます。人間的には先に繁栄したエドムですが、神の救済計画の中心はイスラエルでした。
系図が語る神学的メッセージ
1. 神は歴史全体を見渡しておられる ― 敵となる国々(エゼキエル戦争)も、メシアの系統も、すべてが一つの系図に含まれています。神は終わりの日を初めから知っておられます。
2. あなたは宇宙の偶然ではない ― アダムから始まる系図は、すべての人間が神の創造の中に位置づけられていることを示します。あなたの存在には意味があります。
3. 救いはセムの系統から ― ノアの祝福「セムの神、主はほむべきかな」の通り、メシアはセムの子孫から来られました。神の約束は必ず成就します。
4. 名前の羅列にも意味がある ― 捕囚から帰還した民にとって、この系図は「私たちは誰なのか」というアイデンティティの確認でした。神の民としての連続性が証明されています。
今日の適用
1. 聖書を「通して」読む大切さ ― 系図は読み飛ばしたくなりますが、その中にエゼキエル戦争やヨブ記への接点が隠されています。聖書全体が一つの物語としてつながっています。
2. 終末を意識して生きる ― 創世記の系図が終末預言の地図になっていることは、神が歴史を支配しておられる証拠です。私たちは「終わり」を知っているからこそ、今日を大切に生きられます。
3. 自分のルーツを知る ― 肉体的な系図だけでなく、霊的な系図(信仰の継承)も大切です。あなたに福音を伝えてくれた人、その人に伝えた人…と遡っていくと、最終的にキリストに至ります。
4. 神の計画の中に自分を置く ― あなたは偶然ではありません。創造の初めから、神の計画の中にいます。その計画の一部として、今日という日を生きましょう。
まとめ
I歴代誌1章の系図は、単なる名前の羅列ではありません。そこには神の救済計画の全体像、終末預言への伏線、そしてヨブ記の時代設定という宝が隠されています。
アダムから始まり、セツの系統を通ってアブラハムへ、そしてついにキリストへと至る。敵も味方も、すべてを含んだ壮大な神の計画。この系図は「神は歴史を支配しておられる」という宣言です。
祈り
天の父なる神様。系図という形で、あなたの救済計画の全体像を見せてくださりありがとうございます。アダムから始まり、キリストに至るこの壮大な歴史の中に、私たちも含まれていることを感謝します。
終わりの日を初めから知っておられるあなたを賛美します。エゼキエル戦争に登場する国々の名前が、創世記の系図に含まれていることに驚きます。すべてはあなたの御手の中にあります。
私たちが偶然の存在ではなく、あなたの計画の中に位置づけられていることを覚えさせてください。この確信をもって、新しい年を歩むことができますように。イエス・キリストの御名によってお祈りします。アーメン。


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