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AIは聖書を書き換えているのか?—調べてみてわかったこと

エッセイ
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Nov 7, 2026 · @友喜(ユキ)

「AIの欺瞞」と言われた例を、ひとつずつ確かめてみました

「AIが聖書を勝手に書き換えている」。そんな話を聞いて、不安になったことはありませんか? 「だから紙の聖書でなければ危ない」と言われると、手元の聖書アプリが急に頼りなく見えるかもしれません。本当にそうなのか、紹介された例を一つずつ調べてみました。

AIの使用について:この記事は、AI(Claude)の助けを借りて調べ、まとめました。書いてある事実は、末尾の出典でご自身でも確かめられるようにしています。

転載について:この記事の無断転載、AIの学習や生成への利用はご遠慮ください。

読み方ガイド:聖書の引用は口語訳です。ギリシャ語は、意味を短く紹介するだけにしています。

今日の一曲:裂かれた幕  歌詞 友喜×Claude  曲 suno

第一部 きっかけ

最近、ある講演動画で「AIが聖書を書き換えている」「だから紙の聖書を持ちなさい」という話を聞きました。紹介されていたのは、中国で聖書の物語が書き換えられた例、AIで創世記を作り変えた団体の例、AI企業が何百万冊もの本を破棄した例などです。

聞きながら、心が少しざわつきました。不安になったからではありません。「書き換え」と紹介された例のいくつかは、ネットの聖書を開けばすぐに違いが分かるものだったからです。

講演の結論である「御言葉を知りなさい」「惑わしに気をつけなさい」には、心から同意します。だからこそ、その根拠になった例も確かめてから受け取りたいと思いました。

なお、この記事では講演者やチャンネルの名前は出しません。誰かを責めるためではなく、一緒に確かめるための記事だからです。

第二部 調べてみた

結論から言うと、紹介された例はどれも「AIが聖書の本文をこっそり書き換えた」話ではありませんでした。一つずつ見ていきます。

① 中国の教科書とヨハネ8章

まず、本当の聖書にはこう書かれています。

10そこでイエスは身を起して女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。11女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。〕

(ヨハネによる福音書8章10〜11節 口語訳)

ところが2020年9月、中国の職業中等学校で使われた「職業倫理と法律」の教科書に、この場面を書き変えた文章が載っていると報道されました。群衆が去った後、イエスが「私も罪人だ」と言って、自分で女を石打ちにしたという内容です。最初に報じたのは、アジアのカトリック系通信社UCA Newsです(ChurchLeadersの記事)。

これは信仰へのひどい侮辱です。ただし、調べると次のことが分かります。

  • 書いたのは人間です。教科書の著者と、それを審査した委員会がいました。
  • 報道は2020年で、ChatGPTが公開された2022年11月より前です。
  • 変えられたのは聖書そのものではなく、教科書の中の引用です。

つまり、AIによるものではなく、教科書の中で人が書き換えたものです。そして上の口語訳と並べれば、紙でもネットでも、違いは一目で分かります。

② PETAの「創世記」

2023年5月、動物愛護団体PETAが、ChatGPTを使って創世記を書き直したと発表しました。動物をいけにえにする場面を変えるなどした、「PETA版の創造物語」という電子書籍で、有料で販売されています(CBNの記事)。

聖書を自分たちの主張に合わせて作り変えることには、私も悲しさを感じます。けれどもこれは、本物の聖書をすり替えた話ではありません。PETA自身もCBNの取材に対して、AIに作らせた聖書の「副読本」だと答えています。名前を名乗った二次創作です。

③ AI企業による「本の破棄」

これは、この記事を手伝ってくれたClaudeの開発元、Anthropic社の話です。利害関係があるので、正直に書いておきます。

裁判の記録によると、同社は何百万冊もの紙の本(多くは中古本)を購入しました。そして背を裁断してスキャンし、紙の原本を廃棄していました。ここまでは事実です(remioの検証記事)。

ただし、講演で語られた話とは違う点もあります。

  • 「情報を残さない」のではなく、スキャンしたデータは社内のライブラリに保管されていました。
  • 裁判の記録には、希少本が破棄されたという記述はありません。ただし、一冊も含まれていなかったと証明されたわけではありません(dataconomyの記事)。
  • 廃棄されたのは、スキャンした何百万冊もの紙の本そのものです。多くは大手業者からまとめて買われた市販の本でしたが、すべての書名について、同じ本がほかに残っているかまで確かめられたわけではありません。

一方で、Googleなどは本を傷めずに撮影する方法を使っていました。それでも裁断する方法を選んだことについては、「もったいない」という批判があります。これはもっともな批判だと思います。けれども「世界から本を消して、情報を統制しようとしている」という話には、事実から大きな飛躍があります。

第三部 本当に気をつけること

AIは、偽の聖句を作ることはできます。けれども、世界中の写本や翻訳の本文をまとめて書き換えることはできません。むしろAIは、悪気なく間違えます。気をつけるべきなのは、こちらです。

書き換えられない理由

聖書の本文は、どこか一か所に保管された一つのデータではありません。新約聖書だけでも、ギリシャ語の写本が5,711点確認されています(2026年5月、写本目録の編集に携わる研究者ケイティ・レギットの報告。Critical Texts)。数節だけが残る断片も含む数ですが、それだけ多くの証人が世界各地に残っているということです。その写本をもとにした原文の校訂本があり、世界中に何百もの翻訳があります。

どこか一つのAIが、このすべてをまとめて変えることはできません。第二部で見たように、別の訳や原文と並べれば、変えられた部分はすぐに分かります。

AIがしてしまう間違い

AIは、もっともらしい文章を作るのが得意です。そのため、自信ありげな口調のまま間違えることがあります。たとえば次のようなことです。

  • 章や節の番号を取り違える
  • 似た言葉の節を混ぜて、存在しない「聖句」を作ってしまう
  • ある訳の言い回しを、別の訳として紹介する

この記事を一緒に書いたClaudeも、こうした間違いをすることがあります。ですから、この記事の口語訳の引用はすべて、私が聖書の本文と一字ずつ照らし合わせています。

これは「書き換え」ではなく「間違い」です。そして間違いは、聖書を開いて確かめれば見つけられます。紙の聖書でも、信頼できるネットの聖書でも同じです。

AIと付き合うときの三つの習慣

  1. AIが示した聖句は、必ず聖書の本文で確かめる
  2. 大事な箇所は、二つ以上の訳で読み比べる
  3. AIの解釈は参考にとどめ、教会の教えや牧師の言葉とも照らし合わせる

講演で語られた危うさの中には、本当にあるものもあります。牧師をそっくりまねた偽物のサイトや、「イエス」を名乗る会話アプリなどです。こうしたものに惑わされないためにも、必要なのは同じことです。自分で御言葉を開き、確かめることです。

第四部 黙示録13章の原語

講演では、黙示録の「獣の像」がAIと重ねられていました。まず本文を読んでみましょう。

15それから、その獣の像に息を吹き込んで、その獣の像が物を言うことさえできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。

(ヨハネの黙示録13章15節 口語訳)

この節には、大事なギリシャ語が二つあります。

エイコーン(像) 「姿を写したもの」という意味の言葉です。英語のアイコン(icon)のもとになった言葉でもあります。黙示録13章だけでも、何度もくり返し出てきます。

プネウマ(息) 「息」「風」「霊」のどれも表す言葉です。口語訳はここを「息」と訳しています。

講演では、「これは「霊」だから、像に悪霊のような命が宿るのだ」と説明されていました。そのように読む人もいます。一方で、口語訳のように「息」と取り、「ただの像が生きているかのように語り出す」場面として読むこともできます。文脈からは、この「息」の読み方が自然です。少なくとも、本文に「悪霊」という言葉が書かれているわけではありません。

この像は、時代ごとにさまざまなものに重ねて読まれてきました。初代教会の時代には、ローマ皇帝の像を拝むよう迫られた経験と重ねて読まれてきました。AIと重ねるのも、そうした読み方の一つです。可能性として考えることはできますが、本文がそう断定しているわけではありません。

むしろこの章がはっきり言っているのは、「しるしを見せられて、人々が惑わされる」ということです。驚くようなものを見たとき、すぐに信じもせず、すぐに恐れもせず、御言葉に照らして確かめること。それが、この章から私たちが受け取れる教えではないでしょうか。

結び 自分で聖書を開いて確かめよう

21すべてのものを識別して、良いものを守り、22あらゆる種類の悪から遠ざかりなさい。

(テサロニケ人への第一の手紙5章21〜22節 口語訳)

パウロは「すべてのものを識別して」と言いました。この「すべて」には、AIの答えも、ネットの記事も、そして講演やこのブログも含まれると思います。

講演では、紙の聖書を持つように勧められていました。紙の聖書には、通知に邪魔されず御言葉と向き合える良さがあります。けれども大切なのは、紙かデジタルかではありません。自分で開いて、自分で確かめることです。

そして確かめる目は、他人だけでなく自分にも向けたいと思います。

3なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。

(マタイによる福音書7章3節 口語訳)

この記事も、間違いがないとは言い切れません。だから末尾に出典を載せました。どうぞ、ご自身でも確かめてください。

そして今日、この記事で引用した箇所を、ご自分の聖書で開いてみてください。ヨハネ8章のイエスさまの言葉、「わたしもあなたを罰しない」。この恵みの言葉は、誰にも書き換えられていません。

語彙表(ギリシャ語)

黙示録13章15節の原文は「δοῦναι πνεῦμα τῇ εἰκόνι」(像に息を与えること)です。

本文の形読み辞書の形意味メモ
δοῦναιドゥーナイδίδωμι(ディドーミ)与えること「与える」の不定詞の形
πνεῦμαプネウマπνεῦμα(プネウマ)息、風、霊「与える」の目的語(〜を)。口語訳は「息」と訳す
τῇテーὁ(ホ)その定冠詞。後ろのεἰκόνιと合わせて「その像に」
εἰκόνιエイコニεἰκών(エイコーン)像、姿を写したもの「〜に」を表す形(与格)。英語iconの語源

出典

聖書の引用について

本文の出所:bible.religious-life.com(口語訳聖書 1954年・1955年版)

本記事では『口語訳聖書』©1954,1955,1975,1984,2002 日本聖書協会を使用しています。1954年・1955年の本文を基本とし、改訂箇所は原語からの拙訳、または章節のみを記載しています。拙訳箇所には「拙訳」と明記しています。

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