出エジプトの行程と渡渉地点の諸説

聖書の地理と歴史を図解で

【この地図について】

どの地図を見ても、はっきりと海を渡ったことを矢印で示したものがありません。それには訳があったのです。紅海(ヤム・スフ)の正確な渡渉地点は、聖書学者の間でも議論が続いており、確定的なことは言えないからです。

それでも、「もしかしたらこうかもしれない」という地図でもいいからと、無理にお願いして作成してもらいました。これでなんとなくイメージがつかめるのではないでしょうか。

重要なのは、正確な場所ではなく、神が「人間には絶対に不可能な状況」を意図的に作り出し、そこで完全なる救いを成し遂げられたという事実です。

出エジプトの行程と渡渉地点の諸説

出エジプトの行程と渡渉地点の諸説

聖書に記された地名と「引き返し」の戦略
地中海 ナイル川 デルタ ゴシェンの地 ラメセス シナイ半島 紅海本流 ビッテル湖群 ペリシテ人の地 ペリシテの道 (避けた) スコテ エタム (荒野の端) ピ・ハヒロテ ③引き返す! ミグドルと海の間 バアル・ツェフォンの前 (出エジプト14:2) 候補A 候補B 候補C ? シナイ山 (伝統的位置)

なぜ確定的な地図がないのか

実は、紅海(あるいは「葦の海」)の正確な渡渉地点は、聖書学者の間でも議論が続いている問題です。

主な理由:

  1. ヘブライ語「ヤム・スフ」(יָם סוּף)の解釈問題
    • 「スフ」は「葦」の意味
    • 紅海(Red Sea)なのか、葦の生える湖(Sea of Reeds)なのか
    • 70人訳聖書は「エリュトラー・タラッサ(紅い海)」と訳した
  2. 候補地が複数ある
    • 候補A:ビッテル湖群(Great Bitter Lakes)周辺 – 北部ルート説
    • 候補B:スエズ湾北部 – 中央ルート説
    • 候補C:アカバ湾 – 南部ルート説
  3. 地形の大きな変化
    • 約3500年間で地形が大きく変わった
    • スエズ運河の開削(1869年)でさらに変化
    • 古代の湖や湿地帯の多くが消失または移動
  4. 聖書の地名の比定が困難
    • 「ピ・ハヒロテ」「ミグドル」「バアル・ツェフォン」の正確な位置が不明
    • 考古学的証拠が乏しい(荒野での移動のため)

聖書に記された行程(出エジプト記13-14章)

出エジプト記13:17-18
「さて、ファラオが民を去らせたとき、神は彼らをペリシテ人の地を通る道には導かれなかった。それが近道だったが、神は、『民が戦いを見て、心が変わり、エジプトに引き返すといけない』と思われたからである。それで神は、この民を葦の海に向かう荒野の道に回らせた。」
① ラメセス → スコテ(出13:20)
最初の宿営地。ゴシェンの地から出発。
② スコテ → エタム(出13:20)
「荒野の端」にあるエタムに宿営。ここまでは順調な進軍。
③ エタム → ピ・ハヒロテ(引き返す!)(出14:1-2)
「引き返せ」という主の命令
「主はモーセに告げられた。『イスラエルの子らに、引き返して、ミグドルと海の間にあるピ・ハヒロテの手前で宿営するように言え。それはバアル・ツェフォンの前である。あなたがたはその向かいで、海辺に宿営しなさい。』」(出14:1-2)
この「引き返し」の戦略的意味:
  • ファラオに「イスラエルは荒野で迷っている」と思わせる(出14:3)
  • エジプト軍を追跡させる罠
  • 神の栄光が現れる舞台設定
  • 前に海、後ろに敵 → 完全に神に頼るしかない状況
神学的に重要な点:

渡渉地点の正確な場所が分からないことは、実は聖書のメッセージにとって問題ではありません。重要なのは:

1. 神が「不可能な状況」を意図的に作り出された
・前方:海(どこであれ、人間には渡れない障壁)
・後方:エジプト最強の戦車部隊
・人間の知恵や力では絶対に脱出不可能

2. 救いは完全に神の業である
・「主があなたがたのために戦われるのだから、あなたがたは黙っていなさい」(出14:14)
・地理的詳細より、神の主権と救済行為が強調されている

3. この救済パターンが聖書全体を貫く
・出エジプト → バビロン帰還 → キリストによる救い
・すべて「人間には不可能、神には可能」な救済

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